叛乱 結城合戦 第15話

かすみは鷹丸の頬に唇を寄せ、次々と涙を吸い取った。 「人の温もりの味がする。鷹丸、私も初めてだよ。ありがとうな」 星宿海への道 作者:宮本輝 幻冬舎 Amazon 昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス) 作者:雲田はるこ 講談社 Amazon 承前 香取へ 鷹…

叛乱 結城合戦 第14話

「あなたに私を殺めるなどできるはずもない」 微かな笑みを浮かべてかすみは出て行った。まさに拈華微笑(ねんげみしょう)であった。 なみだあめ<哀愁> 時代小説傑作選 (PHP文芸文庫) 作者:宮部 みゆき,諸田 玲子,志川 節子,梓澤 要,馳月 基矢,高瀬 乃一 …

叛乱 結城合戦 第13話

お前は早魚などではない。母はお前を「かすみ」と名付けた。美しく穏やかで万人に癒やしと糧をもたらしてくれる霞ヶ浦に因んでな。かすみ、我が妹よ あきない世傳 金と銀 源流篇 (ハルキ文庫 た 19-15 時代小説文庫) 作者:髙田郁 角川春樹事務所 Amazon あき…

叛乱 結城合戦 第12話

さぁ、全て申されませ。玄蕃さま。早魚が、あなた様の苦しみや悲しみの全て背負って差し上げます 峠 最後のサムライ 役所広司 Amazon 山本周五郎全集〈第15巻〉虚空遍歴 (1982年) 作者:山本 周五郎 新潮社 Amazon 承前 小一郎は、早魚(さな)と名乗る女の発…

叛乱 結城合戦 第11話

先程は誠にありがとうございました。わたくしの名は早魚と申します。不躾とは存じましたが、も一度の御礼をと思い罷り越しました 蜩ノ記 (祥伝社文庫) 作者:葉室麟 祥伝社 Amazon ひとたびはポプラに臥す 1 (集英社文庫) 作者:宮本 輝 集英社 Amazon これま…

叛乱 結城合戦 第10話

男達の喉を切り裂いて血の海に沈めてやりたい。だが、心はこれ程に憎みながら拒めない己の躰こそ九にも八にも切り裂いて七里之濱に沈めたい。 朝日文庫時代小説アンソロジー『悲恋』 思慕・恋情編 作者:細谷正充,池波正太郎,南條範夫,北重人,山本周五郎,諸田…

叛乱 結城合戦 第9話

この樹は翌檜(あすなろ)という樹だよ。翌日には檜(ひのき)に成りたいと願った名前。念願を叶えたい我ら兄弟もこの樹と同じ。我らは明日成ろだね。 下野国が生んだ足利氏 作者:下野新聞社編集局 下野新聞社 Amazon 足利満兼とその時代 (関東足利氏の歴史 …

叛乱 結城合戦 第8話

覇王の家(上下) 合本版(新潮文庫) 作者:司馬 遼太郎 新潮社 Amazon 名乗りの成り立ち 繰り返しになりますが、足利朝氏は、筆者が創り出した架空の武将です。ただ、幼名足利春王は実在の少年です。 繰り返しになりますが、足利朝氏は、筆者が創り出した架…

叛乱 結城合戦 第7話

我等がこの関東に望むは、動乱ではない。秩序と安寧だ。そうであろう!各々方 私が起つは、我が一族のみの安寧ではない。関東に住まう全ての民草の安寧である。 大河ドラマ 軍師 官兵衛 総集編 DVD全2枚セット 岡田准一 Amazon 承前 永亨十二年(1440)七月 …

叛乱 結城合戦 第6話 

うぬら、兵を退けー! 我が掲げし二つ引両(ふたつひきりょう)の御旗に刃(やいば)を向けるは、即(すなわ)ち逆臣也。汝(なんじ)、清方、私欲に目が眩み主君の何たるかを忘れたか 永亨十二年(1440)七月 鬼怒川河畔 初陣 極楽征夷大将軍 (文春e-book) …

叛乱 結城合戦 第5話

前(さきの)関東管領殿、そなたの心中の苦渋は惻隠する。だが、私も武士、まして、今や鎌倉公方家の惣領である。喩(たと)え、身が八つ裂きになろうとも、父上の辱(はじ)を雪(すす)ぎ、鎌倉公方家の再興を目指さなければならないのだ 武士の起源を解き…

叛乱 結城合戦 第4話

氏朝殿、持朝殿…いや、父上、兄上、流浪の身と云えど春王は武士の子、戦場にて足利の旗を掲げ名乗りとうございます。何卒、元服の儀お願い致します。 室町・戦国天皇列伝 戎光祥出版 Amazon 前節からの続き 永亨十二年(1440)四月 結城城 仮初(かりそめ)…

叛乱 結城合戦 第3話

悪御所だと!万人恐怖だと!好きに呼ぶがいい!! 余は征夷大将軍足利義教である。余の道を阻む者が仏ならば仏を殺し、神ならば神をも殺す。 籤引き将軍足利義教 (講談社選書メチエ) 作者:今谷 明 講談社 Amazon 前節からの続き 本稿において、足利義教は悪役…

叛乱 結城合戦 第2話 

春王殿、われら生まれ育ちは違えども、死するは同じ時、同じ場所。この竹林で誓いし限りは七生の友垣(ともがき)ぞ。爾(なんじ)が劉備玄徳たりえば、我、結城持朝は関羽雲長ならん 敗れども負けず 作者:涼, 武内 新潮社 Amazon 前節からの続き 永亨十二年…

叛乱 結城合戦 第1話 貴公等、この子等を如何にしても殺すと申すか! 是非もなし、結城氏朝が御相手仕ろうや。天下の旗幟、何するものぞ!!

ひかえよ 臣氏朝(うじとも)!流転の身なれど、父亡き後は、我が鎌倉公方なり。我の眼前にて上座に着するは不忠であろう。気に入らぬなら我の首を刎ね、仇敵義教に差し出すがよかろう。 結城合戦(ゆうきがっせん) その叛乱が、時代に、または、その後の時…

平将門の乱 何があってもダチは見捨てねぇよ たとえ朝敵の汚名を着ようともな 何故かって? 俺が平の小次郎将門だからだ

上(かみ)下(しも)共ども、私欲に塗(まみ)れているのなら、坂東はこの将門がもらう 文句があるか! 平将門(たいらのまさかど)の乱 平将門の乱は、突発的に始まった無計画な乱であったと筆者は考えている。 平将門の乱は、平安時代中期、天慶(てんぎ…

磐井の乱 御国ぞ 何をか言わん 此の度、刃に懸けて物申す 我 起つは私心にあらず

勝つか負けるか 生きるか死ぬか 乾坤一擲 座して死すは男子の本懐にあらず 叛逆者磐井の雄叫びを聞け! 叛乱とは、統治権力を行使する支配者に対し、被支配者が、理由の正当、不当の如何を問わず、武力を主な手段として用い、権力機構の転覆、権力の奪取を目…

日本剣豪ランキング 5位〜1位 もはや神か鬼ぞ… 行き会えば鬼神も避くる漢達

いよいよベスト5の発表! ここまでくれば剣技は皆互角、勝負を分かつは、勝利への美学と矜持のみ さぁ御賞味あれ 第五位 沖田総司(そうじ) 戦国にも勝る動乱期であった幕末に誕生した剣客集団が新撰組である。中でも新撰組一番組組長は新撰組内で一番の使…

日本剣豪ランキング 10位~6位 俺に是非を問うな! 剣技一筋、御意見無用の漢達!!

日本史上に名を遺す剣豪たちをランキング 彼等の生き様に勝者も敗者も無い 在るのは求道者たる究極の生き様のみ とくとご堪能あれ 第十位 足利義輝 室町幕府足利将軍家といえば、下剋上に悩まされ、時には洛外へ逃走しなければならない危機に何度も直面する…

名将の名刀 第二章 名将と名刀は義友(とも)と宿敵(とも)によって研かれた。石田三成と大谷吉継の友諠、石田正宗と包丁藤四郎   武田信玄と上杉謙信の情誼、備前長船景光と謙信景光

石田三成と「石田切込正宗、もしくは石田正宗」 「石田切込正宗」の名称は、石田三成が所持していたこと、刀身にある数ヶ所の切れ込み痕に由来する。 刀工は、鎌倉末期の相模国(現在の神奈川県西部)鎌倉の人、岡崎五郎入道正宗といわれている。徳川吉宗の…

名将の名刀第一章 戦国を駆け抜けた漢(おとこ)達の傍らには

徳川家康と「妙純傳持(みょうじゅんでんじ)ソハヤノツルキウツスナリ」 茎に刻まれた銘文「妙純傳持ソハヤノツルキウツスナリ」の意味は諸説があり、確証のある答えはまだない。一説には、所有者の美濃国(現在の岐阜県中南部)守護代斎藤妙純が亡き後、縁…

日本刀の起源 銅剣から鉄剣へ 弛まない名工たちの歩みと足跡

大陸から伝わった銅剣がこの国最初の刀剣であろう。銅剣と言っても100%の銅製ではない。青銅(ブロンズ)である。青銅は主成分の銅に錫(スズ)を混ぜた合金をいう。錫の比率が高くなる程に硬くはなるが、反面、粘りがなく欠けやすい。銅剣の用途は当初は武…

「天下三作」 名工の名は名刀とともに後世まで不朽となるであろう。信長、秀吉、そして家康が愛して止まなかった名工たち

幾多いる刀工のなかで特に名高い三人の名工と鍛造した作品について語ってみようとおもう。 ・粟田口藤四郎吉光・岡崎五郎入道正宗・越中松倉郷義弘 この3人が、天下三作され、日本刀剣史上、燦然ときらめく三つの巨星である。 天下三作の選出のいきさつは、…

五箇伝(ごかでん)

五箇伝(ごかでん) 五箇伝とは、大和伝(やまとでん)、山城伝(やましろでん)、備前伝(びぜんでん)、相州伝(そうしゅうでん)、美濃伝みのでんの五大生産地を指す。鍛造法、作風、時代、生産地で分類される。この五派以外は、脇物という。 大和伝(や…

天下五剣 日本の至宝

幾多の英雄剣豪の愛刀として時代を切り開いた名刀中の名刀「童子切安綱、三日月宗近、鬼丸国綱、数珠丸恒次、大典太光世」、これら五振はいつしか天下五剣と呼ばれるようになった。明治、大正、昭和、平成、令和と研究者の著書において紹介され、その名声は…